城東地区歯科医師会連合会
平成27年度第2回医療連携講演会に出席致しました。
- 演題:
- 「発達障害」児の外来診療について
- 講師:
- 東京都立東部療育センター院長 加我 牧子 先生
発達障害は病名ではないのに2005年に発達障者支援法が施行されて以来、法律による定義が、医学の領域でさえ病気の定義であるかのように使われるようになり、混乱をきたしています。
もともと発達障害とは知的障害(精神遅滞)、脳性麻痺の他外因性脳障害、てんかん、代謝変性疾患、感覚障害、染色体異常、自閉症、学習障害など胎生期から発達早期に起因する中枢神経系への障害の異常によって生じる状態を指す言葉です。
しかし、現在の日本では法律による定義、すなわち「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢に於いて発言するものとして政令で定めるものをいう。」という限られた疾患群をあらわす言葉となり、世界的にはかなり特異な状況になっています。
歯科といわずどこの外来でも一般にもっとも対応に難渋するのは、知的障害を伴う自閉症でしょう。
自閉症の特徴として社会的相互関係の障害、コニュニケーションの障害、想像力の障害があり、感覚過敏(一方で感覚の鈍感をともなうことも多い)や興味の範囲の限定、特定のものや事柄への執着、多動、不注意、睡眠障害などにより社会的適応に困難を生じます。
一方で予定された事柄について対応法や始まりと終わりを十分理解していれば、かなり困難なことでも粘り強くやり遂げることが出来るという特性も持っています。
また、聴覚入力による言葉の理解は極めて苦手なことが多い反面で、視覚的理解は優れていることが多くみられます。
また、記憶力がよく、何年も前の事を今の現実の事の様に感じる能力があり、周囲の人には状況がまったく理解できない状況で、本人にとってはリアルでつらい状態が突然思い起こされ、パニックに陥ることもあります。
これらのことから、外来受診に際しては、まずはあらかじめ診察室の場所を体験させること、椅子に座る練習からはじめ、どんなことをするのか、どうすれば終わるのかについて図解したもので理解できるように準備してから行うことが勧められてます。
「押さえつけないと治療ができない」という事が常識になりがちですが、そういった治療は事故につながったり、治療のたびに本人の記憶がよみがえって一層治療が困難になるという悪循環をきたしやすくなります。
そして・・・
自閉症に限らず、歯科治療は患者さんにとってなにがしか恐ろしいものに感じられがちですので・・・
患者さんの理解の程度によってまた理解のしやすさを考慮して、あらかじめ説明の仕方を工夫し納得できる状態で治療が進められるように、これからも、治療にのぞんでいきたいと思います。